お稽古のたび、おいしいお菓子が食べられることが嬉しい!という不純な動機で小学校6年生から高校を卒業するまでの7年間、茶道を習っていました。
茶道に出会ったきっかけは、祖母からの「お稽古事はなにがいい?」提案でした。
候補にあがったのは、日本舞踊、お琴、茶道の3つ。私が選んだのは、茶道です。
お菓子につられたのもそうなのですが、決め手になったのは発表会がないこと。以前に習っていたピアノの発表会の存在が子ども心に毎回憂鬱でしかたなかったからです。
が、後に茶道にはお茶会があり、人前でお点前を披露することがあるのを、小学生の私には知る由もありませんでした(笑)
特にこれと言って意欲はなく、熱心にお茶の道を究めようとか、茶道の先生になりたいなどとも思わず、流れに身をまかせるように先生のもとに通った7年間でしたが、このことで茶道の世界観が無意識のうちに刷り込まれ、今の自分を形成するしっかりとした根になったことは間違いありません。
後に、「茶道ってすごい!日本のカルチ
ャーが凝縮された素晴らしいものだ」と再認識したのは、大人になって生活を考えるようになり、インテリアにかかわる仕事をするようになってからです。
現在、インテリアとカフェの仕事に携わっているのですが、茶道で受けた影響が様々な場面で表現されています。
とはいえ和家具や和食を提供しているわけではないのですが、暮らしにまつわる住まいのしつらえ、生活するための家具や道具、食などへの考え方は基本、茶道に触れたことで培われたことが色濃く反映されていると思っています。
お茶室はまず「建築」であり、庭は「ガーデニング」、床の間のお花は「花道」掛け軸は「書道」、着物や茶筒入れの「織物」、茶碗、茶筒や水指などの「陶芸」、茶筒の「塗物」、お菓子もしかり初釜の時に出されるお料理は日本の「食」文化を、炉の中にはお香を入れ「匂いの演出」もあります。
さらに、それぞれに四季を意識して絵柄を選び、お花もお菓子ももちろん季節を感じさせるものを用意します。日本の四季をあらゆる角度から総合演出しています。
そしてお作法は、究極のおもてなしではないでしょうか。
これほど日本のカルチャーが盛り込まれたものを、見るだけではなくそれを贅沢にも道具として使うことができるのがすごいところです。
しかも、どれも伝統に則った「本物」の素材の道具です。
美術館や博物館では見ることはできますが、触れられる機会はそうそうありません。
また、道具と道具をおく間隔、美しい「間」というのをとても大切にしていて、この空間認識は、ショップのディスプレイや家づくりをする上でも生かされました。
多感な子どもの時に、お茶の道から五感を体感できたのは貴重な時間だったと、きっかけをくれた祖母にはありがとうでは足りないくらい感謝をしています。
子どもの頃に体感した感覚は、人にはとても伝えにくいものですが、日々の生活の中で家族に、そしてショップを訪れた方々にも少しでも感じてもらえたらいいなと、大切にして生きています。
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