自分が今ここにいるのは、なぜなのか?
自分のルーツをずっと昔にさかのぼってみると、先祖代々さまざまな人が生きてきて、そのおかげで今の自分がいることがわかります。
実際には、せいぜい曽祖父母あたりまでの話を聞くことができればいいほうでしょうか。
家系図が残っているようなお家なら、とても興味深い話がたくさんありそうですね。
私に子どもが生まれたとき、私の母はすでに他界しており、息子たちはおばあちゃんをひとりしか知りません。
孫に会うことのできなかった私の母が、「いない人」として、彼らの記憶に残っていかないことが無性に寂しく思えたので、私は事あるごとに、彼らのおばあちゃんである母の話をしてきました。
あなたたちのおばあちゃんはね……
中学校の先生で、当時ではまだ珍しい茶髪・毛皮という格好でよく登校していたこと。
車を特注色のピンクやイエローにしたいと言って、塗装屋さんを困らせていたこと。
集合写真を撮るとき、はじっこのほうにいると「なんで真ん中に行かなかったの?」と必ず怒ること。
玄関先の花壇には、春になると母が植えたチューリップがきれいに花を咲かせていたせいか、私が花の中で一番好きなのはチューリップであること。
なぜか、声優になりたいといつも言っていたこと。
もし生きていたら、孫の応援におそろしく力を注いでいたであろうこと。
母が仕事をしていたためか、おばあちゃんっ子だった私は、自分のおばあちゃんの話もたびたびしました。
遠足や運動会のここぞというときのお弁当は必ずおばあちゃんの担当で、いなり寿司や、お肉屋さんで売っている中で一番高いお肉、真っ赤ないちごなど、彩りの良い、きれいで美味しいお弁当だったこと。
運動会の応援席から身を乗り出し、恥ずかしくなるくらいの大声で声援を送っていたこと。
おばあちゃんが生きていたら、あなたたちの自慢話がすごいはずだということ。
サングラスをかけると、井上陽水さんにそっくりだということ。
今はもういないけれど、そんな人たちがいて、あなたたちが生まれてきて、脈々とその気質は繋がっているんだよ、ということを覚えていて欲しかったから。
この性格は、おばあちゃん譲りなんだね!
おじいちゃんに似ちゃったから、しかたないね!
そんなふうに、ご先祖様の「おかげ」や、ご先祖様の「せい」にして、妙に納得してみたり、うれしい気持ちになったり。
そんな私の話を、息子たちは案外楽しそうに聞いてくれたものでした。
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