家ものがたり〜玄関編~
- ikuko shimada
- 8月9日
- 読了時間: 2分
僕は家の中でも、顔として、とても重要なポストを任されている玄関と申します。

なんですが、これ散らかってません?
あまりにも散らかってません?
2度言いましたけども。

まあね、仕方ないよ。
お母さん、忙しいから。後ろ振り返る時間すらないもんね。
さっきお買い物から帰って来たんだけどね。
不器用に靴脱いで前を歩く子どもを、追っかけて走ったよね。
そう、子どもの危険回避の方が大事ですもんね。
まだよちよちしてて、階段から落ちたら大変だもんね。
お買い物袋そっちのけで、まずチビちゃんのケアよ。
手洗いのサポートにも入らないとだし。
そんな寛大な心でいつも家族を見送りお迎えしている僕、玄関は
お腹いっぱいにスニーカーやら、ブーツやら抱え込み
毎日「いってらっしゃい」と「お帰りなさい」をくりかえております。
雨の日なんか傘くんまでずぶ濡れで帰ってくるからもう大変よ!
それはそれは傘くんもグッタリしてるもんね。
放心状態で、雨を垂れ流してくるのよ。
倒れそうなのよ。
今にも。
靴たちの上に!
お父さんはね、時々僕のところに来て靴を磨いてる!

その間、僕はずっと鼻をつまんで、どんどんピカピカになる靴たちをみている。
匂いが苦手なのよ、実は。
お父さんには内緒だけどね。
おっと、お兄ちゃんが帰ってきたぞ。
自転車止めてる音がするから。
バタン。
「ただいまぁ」
あら、今日はなんか元気ない。
ね、なんかあった?
あったよね、これ。
おーい、かいだーん!
お兄ちゃんなんか元気ないぞ、どしたっ⁈
リビングへ続く階段への業務連絡終了!
あとは、うちの仲間の階段やリビングがお兄ちゃんをケアしてくれるだろう。
僕はこの靴たちをなんとか整列させてないといけないからねー。
「へぇーい、ただいまお兄ちゃんがこちらを通過中でーす」
と階段。
動かないお腹を揺らして裏っ返しになったサンダルを揃えようと必死になってる玄関に
階段から返ってきた声は、もう耳に入ってはいなかった。
おわり