• ikuko shimada

『家具ものがたり』 ~テーブル編~

最終更新: 2019年8月6日

大きな木のテーブル。

みんな僕のことをいい匂いがするという。

なでたり、たたいたりして気持ちいいねって言ってくれる。




この家では、僕は家族の中心にいる。

美味しいご飯をみんなで食べながら、サッカーの試合のこと、自慢ばなし、

悔しかったこと、、、、、この家族が大好きだった。

みんな仲良しだし、なによりいつも僕のそばにいてくれるから。

笑ったり悩んだり、僕はその全部を受けとめてきた。


隣の部屋のソファからは、いつも羨ましがられていた。

だって彼女のところへいくと、なぜかみんなすぐに寝てしまうから。

そんな時、きみがフカフカとしてあまりにも気持ちいいからだよって、僕はいつも彼女を慰めるんだ。


ある時、新しいキャビネットがやってきた。最新のデザインと色、彼はピカピカと輝いていた。


みんなはもう彼の話で持ちきりだった。

どうやらとびきりの有名人がデザインしたらしい。

やっぱり違うね~かっこいいね~

みんな口々に彼を褒め称える。


僕は哀しくなりさびしくなった。


あんなに一緒にテーブルを囲んで遊んだ子ども達も大人になり、家族みんなでご飯を食べることもだんだん少なくなってきていた。


僕はもういい匂いはしていなかった。

歳をとったせいか木肌は黒ずんでシミもある。

僕はもう誰の役にも立っていないのかな。



時々、あるじであるお父さんが布巾で丁寧に拭いてくれることがある。

お母さんは気がつかない、裏の汚れもキレイに拭き取ってくれる。

気持ちがいい!お父さんのことは大好きだった。


でもまたひとりぼっちの時間が続く。

もう僕は僕は、、、、、、



そんなある時、珍しく訪問者がやってきた。

そのおじさんに会うのは初めてだ。

おじさんは僕を見つけるとうーんとうなずいた。

顔をのぞきこんでは目をパチパチさせた。そして今度は撫で回したり、

その太い腕をでーんとのせてきたりした。


いいねーこのテーブル!

いい味が出てるね~どれくらい使ってるの?


お父さんは、僕が初めてこの家に来た時のこと、なぜ僕を選んだか、

どんなところが好きかを話し始めた。

僕はあらためて好きなところを言われて照れた。


どうやらこの長い年月の間に、僕には深みというものができているらしい。

新人には決してない風合いがあるらしい。

そして、それはこれからもっともっと増してくるらしい。


嬉しかった。あの現代っ子のキャビネットにまだ勝てるのか?


いや、勝っているのか?


ソファが、ふっと笑いながら言う。

勝ち負けなんて、、、家族はみんな大切に想ってくれてるから大丈夫!!












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